House【防蟻の真実。長期優良住宅でも安心できない理由とは?】

防蟻というのは構造材をシロアリの食害から守るための措置のこと。
シロアリは木材を食べる昆虫で、放置すると床が沈む、柱が空洞化する耐震性能が落ちるなど、ほっておくと構造に重大な問題を引き起こします。
ちなみに、シロアリはほぼ全国に生息しています。
主に地面の中に巣を作り、湿気のある土壌を好むのですが、自然界では倒木・朽木など森の掃除屋として欠かせない存在です。
基本的には木材(餌)・湿気・暗所と、この3つが揃えば地域に関係なく発生可能なので、「寒い地域は安全」というのは誤解なんですね。実際シロアリは地中生活なので年間を通じて外気温が低くても生存できます。

実際に私の家でも被害がありました。この仕事をするようになって家のリフォームを手掛けた際、見せ柱かなと思った材料が実際には構造体で、手で簡単にもぎ取れるほど中は空洞になっていました。当然ですが、すでに構造体としての役割は果たしていませんでした。
3つの条件もきっちり揃っていましたね。基礎は昔ながらの布基礎で床下は土が露出しています。私が幼いころのリフォームで地窓(換気口)も塞がれて、おまけに風呂のタイルクラックから水が染み出し床下に湿気が籠る状態。
皆さん忘れないでください。プロに頼んだってこういう仕事をするんですよ。
皆さんもご実家の状況一度見られてもいいかもしれません。
さて当社ではどのような対策をしているかご紹介します。
まずは基礎形状はベタ基礎工法。これは言わずもがななので割愛します。
その他「基礎と土台の間に物理的な障壁を作る」シロアリが蟻道を作りにくい構造の基礎パッキンを使用しています。
またこのパッキンは優れた通気性能を持っているため、床下に湿気が籠るのを防ぎます。

それでもまだ安心とは言えません。シロアリは配管貫通部、基礎クラック、外周立ち上がりなどからも侵入できます。
そこで有効なのは、基礎の仕上げに手を加えないという方法。基礎が丸見えならクラックや立ち上がりに蟻道ができれば点検で発見ができます。
しかし近年の建築現場を見ると、基礎に化粧仕上げを施しコンクリートが見えない状態になっているのがほとんど。
これにはいくつか理由があって、たんに基礎の仕上げの荒さを隠すためだったり、施主にクラックが発見されないようにするためなどネガティブな要素を含んでいますが、そうではない場合もあります。
例えば最近のトレンドで言えば、床下断熱ではなく基礎断熱工法を推奨するメーカーが増えています。
基礎断熱とは床下も室内と同じ温度環境にする工法で、気密性を高めるために有効とされていますが。「床で気密とったらいいじゃん??」と私は疑問に思うのですが。まぁ気密処理って一般的には難しい工程なのでしょう。

当然、コンクリートを覆ってしまうのでデメリットとしては、シロアリの発見が遅れるという点です。あと基礎の状況も確認できないですしね。するどい方は室内側に断熱すれば?と思い浮かべた方もいるかもしれませんが、コンクリートは熱橋になるので断熱効果を得るなら断熱は外側ですね。
あとは床下暖房を採用するメーカーもあります。ただしこれも一つ間違えるとシロアリリスクは上がります。
なぜならシロアリは暖かい場所を好むから。特に冬でも床下が15〜20℃程度に保たれるとシロアリは活動を止めないと言われています。
とはいえ、私たちも基礎断熱を採用することがあります。基本は床下断熱ですが、室内の床を土間仕上げにしたい時なんかは、床下という概念がないので基礎断熱をすることになります。

ここで活躍するのが「タームガード」という防蟻処理になります。
タームガードとは基礎の外周にパイプを仕込んでおいて、そこから薬剤を定期的に注入するシステム。
これをすると建物の周りに防蟻のバリアを張ることが可能です。BPでは床下断熱の場合にも採用するのですが、私が知っている防蟻対策の中では一番優秀な方法だと思います。
なぜなら、後から何回でも再処理できるので、長期的に効かせ続けられるのが強みだからです。

これなら皆さんも安心でしょ?
でもここでも問題が勃発するんですよ。
これは実際にあった話なのですが、長期優良住宅って耳にしたことがありますよね。
長期優良住宅とは「長く安全・快適に住み続けられる性能を満たした住宅」として、国が認定した家のことで、70年〜100年使う前提で設計されています。この審査では、なんとタームガードは無効なんです。
「タームガードは“土壌側の対策”なので、建物の防蟻処理としては評価しません」と言われます。
じゃ何をすればいいのか?それは構造体である、土台や柱部分に薬剤噴霧処理をしなさい。というもの。
薬剤噴霧というのは、シロアリを寄せつけない・食べさせない・殺すための木材表面処理です。
つまり長期優良住宅は建物の安全を考えた制度なので、建物以外になにか工夫しても評価の対象にはならないということなのでしょう。

制度側にも理屈があって
・メンテナンスされない可能性がある
・100%侵入を防げるとは言えない
・建物単体で耐久性を担保したい
この主張が間違っているとは思いませんが、そもそもですよ?薬剤噴霧だって、その後メンテナンスされない可能性ありますよねって話。というか、床や壁の仕上げをはってしまったら、その後土台や柱に薬剤噴霧することはできないのでは?という疑問が残ります。
100年持つ家を作るなら選択すべきは何か?って話ですよね。
だけど制度なので、文句を言ったところで意味がないのです。
結果的に長期優良住宅をとる前提で、タームガードもやりたいなら薬剤噴霧とコストが二重にかかるんですね。

このような“審査を通すためにやっている”というナンセンスな出来事が実際に起きているわけです。
長期優良住宅をとれば、税の軽減やローン控除など家を建てるオーナー様にはさまざまな恩恵があります。それは重々承知していますが、本来の目的はなんだっけ?といつも思うわけです。
言葉が悪いかもしれませんが、私たちからすれば特にメリットもないので、長期優良住宅なんてどうでもいいことなわけです。
そもそもBPの家づくりとして「長く愛される建築」がテーマなので、長期優良を取るからと言って特別張り切って家づくりをすることもないのです。
以上