Others 【GX志向型住宅は無意味?みらいエコ補助金の活用法】
前回の記事では、みらいエコ住宅2026事業について、
「どんな制度で、何を満たせば使えるのか」を整理しました。
ただ、実際に相談を受けていると、
「性能を上げすぎると、逆にコストが合わなくならない?」
「制度に合わせて家づくりをするのは正解なの?」といった声をよく耳にします。
今回はもう少し実際の家づくりに近いところで、
どの区分を目指すのが現実的なのか、どこまで性能を引き上げる意味があるのか
という点について触れてみます。

どこを目指すべき?
まず前提として、GX・長期優良・ZEH水準のどれかが一律に「正解」というわけではありません。
みらいエコ住宅2026事業は、性能の段階ごとに支援の幅を持たせた制度です。
そのため、どこを目指すかは家の条件や考え方によって自然と変わってきます。
補助金額だけを見ると、GX志向型住宅が一番魅力的に見えるかもしれませんが、
敷地条件や建物形状、日射の取り方、太陽光が現実的に載るかどうかといった要素によって、GXが無理なく成立する家と、そうでない家ははっきり分かれます。
無理にGXを狙うと、太陽光を過剰に載せる必要が出たり、コストが上がった割に体感的なメリットが薄くなったりする。
そういったケースも、正直少なくありません。

「性能値」をどう捉えるか
断熱性能や省エネ性能は、一定のラインまでは上げた分だけ効果がはっきり出ます。
室温が安定し、冷暖房が効きやすくなり、光熱費も下がっていく。
この実感は、性能を高めるほど分かりやすくなります。
ただ、ここで一度立ち止まって考えたいのが、「どこから先は効き方が変わるのか」という点です。
例えば、私たちBlackPepperがつくる住宅の標準仕様では
外皮性能として UA値0.28前後 を確保しています。
これは、
・ZEH基準を大きく上回る性能
・HEAT20でいう G2レベル に相当します。
このあたりまで来ると、冬や夏の室内環境について大きな不満が出にくくなります。
「前の家と比べて楽になった」「冷暖房の使い方に悩まなくなった」そんな声が多いのも、このラインです。

GXで求められるのは「その先」
GX志向型住宅では、この「十分」と言えるラインを超えて、さらに性能を引き上げることが求められます。
ただ、すでにG2レベルの断熱性能を確保している家にとって、その先が常にプラスに働くとは限りません。
実際には、
・設計の自由度が下がる
・設備構成が複雑になる
・コストに対して体感差が小さい
といった側面が出てくることもあります。
ここは補助金額だけでは判断しにくいポイントです。

現実的な考え方
実際の家づくりでは、次の順番で整理することが多いです。
①まず、長期優良住宅レベルの性能をしっかり確保する
②断熱・省エネは「十分」と言える水準まできちんとやる
③その上で、無理なくGXに届くかどうかを見る
最初から「GXを取るためにどうするか」と考えるよりも、
「この家として無理のない性能はどこか」→「結果として、どの区分になるか」
という流れの方が、設計としても、住まいとしても安定します。
最後に
みらいエコ住宅2026事業は、性能を上げれば上げるほど得をする、という単純な制度ではありません。
性能には「足りない」ラインと「十分」なラインがあり、「十分」を超えた先は、慎重に判断すべき領域に入ると感じています。

補助金は大切ですが、それ以上に大切なのは、その家がどんな暮らしを支えるか。
その視点で整理した結果として、どの区分を目指すかを決める。
それが、現実的で後悔の少ない考え方だと思います。