Post:Dec 25, 2025 | 竹内 恵一, House, アドバイス

House【なんのためにやるのか、省エネ住宅。】

2025年を振り返って「本当に大事なことって何だろう」と考える時間が増えます。
今年の最後に、私としては一度きちんとお話しておきたいテーマがあります。

それが、「なんのためにやるの、省エネ住宅?」という話。
世の中はとにかく省エネ×省エネ。住宅業界でも高断熱・高気密、ZEH、GX志向、補助金…と、性能や数値の話が溢れています。
でもその根っこにあるはずの「誰が、何のために、省エネをやるのか」この視点がすっぽり抜け落ちていないでしょうか。

そもそも省エネ住宅とは何か?
まず定義を整理しておきましょう。
省エネ住宅とは、高断熱・高気密化と省エネ設備の導入により、冷暖房などのエネルギー消費を抑え、少ないエネルギーで快適に暮らせる住宅のことです。

では高断熱とは?
壁・床・天井などに断熱性能の高い材料を用い、屋外の暑さや寒さの影響を受けにくくする性能のこと。
室温が安定しすることで、冷暖房に頼りすぎなくて済みます。

そして高気密とは?
家の隙間を極力なくし、空気の出入りをコントロールできる性能のこと。 計画換気が可能になり、せっかく暖めたり冷やしたりした空気をみすみす捨てることがないようにします。

細かく言ったら他にもメリットがあるのだけどとりあえず定義としてはこんなところ。

ここで疑問がわきます。「じゃ、ここからが高断熱・高気密ですよ。という明確な線はあるのか?」

私の認識で話すとありません。
一般的には国が定めたラインより上なのか下なのか。なのか?笑
2025年4月からは、新築住宅すべてに省エネ基準(断熱等級4以上)への適合が義務化され、これが実質的な“最低ライン”になります。
ただし最低ラインをクリアすると「高断熱・高気密です!」と言うのはなんか違和感が残りますが。
言葉なんてものはカテゴライズしようとすると途端に矛盾ができるもので…まぁいいや

話を進めます。

省エネ設備とはなんですか?
省エネ住宅を語る上で欠かせないのが省エネ設備。 身近なところで言えば、エアコンやエコキュートに代表されるヒートポンプです。
以前も話しましたが、これは本当にすごい技術です。1の電気エネルギーで2や3といった熱エネルギーを生み出す。
空気中にある熱を「くみ上げて」利用する仕組みです。

といってもなかなかピンときませんよね。分かりやすく言えば悟空の必殺技「元気玉」みたいなものです。悟空自身の力でなく周囲から少しずつエネルギーを集めて大きな力にする。それを使っているのがエアコンやエコキュートです。
あとLED照明も省エネにはかかせないですね。

でもさ、もはやこれら省エネ機器を使わないで家を建てる方が不自然ですよね。
これは、やってて当たり前じゃない? という領域です。
なので、普通に家づくりをしてれば、特別なことをしなくてもある程度の性能(断熱等級4とか)には到達できます。

ここからが今日の本題です。
世の中は「温暖化対策」「カーボンニュートラル」「ゼロカーボン」と立派な言葉を並べます。
でも、その言葉ばかりがひとり歩きしていて、いったい誰のため? 何のため?この問いがあやふやな感じがしません?

誰かの利権…かもしれませんが。

私は2025年から山の中で、築50年の低気密・低断熱の教科書みたいな家に暮らしています。(ずっといるわけじゃないです)
当然、冬場は空気を温めても、暖かい空気は隙間からどんどん逃げるので対流式の暖房は向いていません。
なので出力の大きい輻射式の暖房が必要になり、薪ストーブをセレクトしました。
すると、今度は燃料として薪が必要になります。買えばお金がかかる。だから家の周りの木を切って自分で薪を作る。
これがとにかくしんどい。玉切りした木を運ぶだけでも、坂を上って下りて。そのあとは重たい斧を振り回して。

その時、ふと思ったんです。
当たり前のことなんですが、今めちゃめちゃ運動してるな俺…

世の中の一部の人は暖房のついた家でスマホ見ながら〇〇。やべっ運動不足だから24時間営業のジムに車で行く。
ジム運営側も、あなたがいつ来るかわからないので暖房で部屋を温め、照明をがんがん灯して、スタッフまで配置して待っているわけです。ひとりの運動不足解消のために、世の中でどれだけのエネルギーが使われているのか。
一方で私は自分で薪を割り運動不足を解消し、その薪で家まで暖めている。
完全に自己完結なわけです。

これが偉いって言ってるわけじゃないですよ。みんなに「薪を割れ」と言いたいわけではありません。
でも、実際私の方が省エネだったって事実を話しただけです。
日本で掲げている省エネの目的が 本当に温暖化対策やエネルギー削減なら、家のスペックに補助金を出すのが正解なのか?と思えてなりません。
だいたい補助金のために工務店では申請残業が増え、一人の社員のために事務所を暖めつづける。
それを審査する行政は?ランニングコストは?
金でなんでも解決しようとするのはどうなんでしょうね?浮いたお金で24時間ジムに行っちゃいますよ?

でもね、そういう不合理っていつか修正されていく気もしているんですよ。
例えばね、私が使っている包丁は鋼で研げば何度だって新品同様の切れ味だし、コーヒーを飲む時は手挽きですよ。
余計な便利っぽいものはいらなくない?って時代に突入している気もしています。
相変わらず大排気量の車や古ーいバイクは好きですが…
まぁ私は省エネ推進委員でもなんでもないし、ただ気づいちゃったから発表してるだけの人間です。

ただただ、世の中の省エネごっこに巻き込まれていることに腹が立ち、こんなこと早く終わればいいなと切実に願っています。

最後に。BlackPepperは、性能のいい家を作りたいわけではありません。
あくまでもそれは過程やベースととらえ。その先にある暮らしにフォーカスし、そのために必要なデザインや機能を追求する空間づくりが目標です。

さぁ2026年もばんばん省エネ補助金申請やりましょう!